【引退ブログ Vol.8】 佐藤宏樹(エペ/法学部/慶應義塾高等学校出身)
【引退ブログ Vol.8】 佐藤宏樹(エペ/法学部/慶應義塾高等学校出身)

ご紹介にあずかりました、エペの佐藤宏樹です。今年1年間、あれほど熱い舌戦を繰り広げてきた小西が自分にこんなにも敬意を払ってくれていたとは夢にも思っておらず、できる男に褒められるというのもなかなか悪くないなと悦に浸っています。
意外に思うかもしれませんが、僕はこう見えて人見知りであり、長い間留学していた小西にも、正直当初は苦手意識がありました。自分たちの腹の内を限界以上にぶちまけ合ったあの地獄ミーティングがなければ、もしかしたら今もそうだったかもしれません。思想こそ全く似通いませんでしたが、思ったことをとことん言い合ったあのミーティングや、筆舌に尽くしがたいほど最低で最高な会話を楽しんだあの夏合宿を経て、遂には真に小西と友人になれたような気がしています。部のため仲間のため、忙しい中でも彼の優れた能力を遺憾なく発揮するというのは僕にはとてもできないことでとても尊敬していましたし、それは今後も変わらないでしょう。引退・卒業後も、こんな僕とも仲良くしてくれると嬉しいです。また議論を交わしましょう。
さて、これまでの僕のフェンシング人生を振り返ってみると、よくもまあ7年間も続けたなと自分自身へ驚きます。高校で坂藤に誘われて始めてしまったが最後、高校大学を通して試合で思うような結果は出せず、強い先輩や同期、後輩の活躍をただ羨むことしかできず、フェンシングをしている自分の存在価値を疑い続けるような、そんな苦しい時間しか味わってこなかったような気もしています。
それでも僕はフェンシングを始めたことを後悔はしていませんし、最後の試合や早慶戦のあとにはむしろすがすがしい気持ちで引退を受け入れることが出来ました。この7年間、僕は苦しみながらも自分なりにできることを必死に考え、必死に努力し、それを楽しみながらやり抜けたからです。もちろん結果が出せたならば出せたに越したことはなかったですが、それでも僕は、単なる強がりではなく本当にそう思います。
やるべきことはやる、間違っていることは正す、一人間として一本筋の通った信念を貫き通す中で、時には同期をはじめ、周りの人間に理解されなかったり、意見がすれ違ったりすることもありました。しかしそれも含めて、僕は自分が自分らしくあるためには必要なことだったと思いますし、それをやり遂げられたことはとてもうれしく思います。特にこの1年間、僕は僕自身が言っていることが間違っていると思ったことはないですし、その頑固さのために同期の皆(特に戸田)には苦労を掛けたことももしかしたらあったのかもしれませんが、まあそれはお互い様なので謝りません。
こんなことを言ってきたわけですが、同期の皆は僕以上に癖の強い人間が多く、話しているだけで最高に楽しい人たちでした。各々がしっかりと自分の意見を持ち、それを戦わせながらも決して迎合しない、それは一見まとまりがないように見えるかもしれませんし、実際そういったところも多々あります。他人に興味がないエペ、自分を正しいと疑わず盲目的に突き進むフルーレ、バランスを取ろうと時にどっちつかずになるサーブル、問題児を抱えるマネージャー、本当に大変でした。ですが、個人レベルでは皆何かに向けて必死に努力している人間ばかりで、そういった面ではこの代以上に真剣に努力した代はそうはないのではないかなと思います。自分自身努力を怠らない仲間の姿にとても刺激を受けていましたし、それはきっと互いにそう思っていることと思います(そういう風に思っておきます)。本当に楽しかったなあと今思い返してもたくさんのエピソードが浮かんでくるものです。卒業してからも、この繋がりが消えてしまう事のないよう、心の底から願います。皆輝かしい道へそれぞれ進むわけですが、忙しくてもたまには集まって昔話でもしましょうね。
後輩の皆には感謝だけ、伝えたいと思います。強くなるため、一緒に歩んでくれてありがとう。急速に育っていく後輩の圧力に、僕は常に刺激を受けていました。引退後にどれだけ練習に行くかはわかりませんが、その時はまた、今以上に強くなった皆の姿を見せてください。そして、こういうことを言うとまた怒られそうな気もしますが、現役時代に思っていたことなので最後に供養として、後輩にこのメッセージをばら撒いておこうと思います。これからのフェンシング部を構成するのは現役の皆であり、僕らOBOGはしょせん外野から野次を飛ばすまでです。戦えるのは皆だけで、僕らは精々支えることくらいしかできません。なればこそ、好きにやってください。自分たちがどうしたいか、自分たちがどうなりたいか、周りの顔色や慣習に縛られることなく、自分の思う道を突き進んでください。少なくとも僕は、誰にも忖度せず、自由に暴れまわる皆の姿が見られたらうれしいです。皆の活躍を楽しみにしています。
最後に、普段僕があまり言わない、言えないようなことを言って締めくくりたいと思います。納会でも話したことですが、僕がフェンシングを始める、続ける、やり遂げるという選択をしたのは他ならぬ自分自身です。しかし、その選択を取ることが出来た背景には、始めるきっかけをくれた坂藤秀昌、続ける理由をくれた先輩方やさと子さん、やり遂げる意志を尊重してくれた両親、そして常に横で共に歩き続けてくれた同期の皆がいて、その全員のおかげで今の僕は成り立っています。僕のような人間は口だと必ずちょけ出してしまう気がするので、この場を借りて感謝申し上げます。長いようでも、一瞬だったかのようでもあった大切な7年間、本当にお世話になりました。ありがとうございました。
そんなわけで、この引退ブログリレーも次で折り返し地点となりました。このバトンを、この代きっての自由人、エペの髙橋未楽に渡します。
彼は大学生活の主軸をダンスに置き、時にダンスのために部活を休むことさえあったほどです。しかし、それでも大会では個人・団体問わず輝かしい活躍をしてくれたことは、皆の記憶にも深く刻まれていることでしょう。それを裏付けるのは、好きなことにはとことん熱量を注ぎ込む彼の熱さです。周りにはあまり見せないだけで、あの活躍は彼自身が裏で積み重ねた努力による、当然の帰結に他なりません。
彼の個性は、各々が好き勝手に暴れて意見をぶつけ合う、そんな我々の「らしさ」を構成する大事な一部であり、彼が今後も私の大切な友人であることに変わりはありません。
それはそれとして、エペ人特有の非常に冷めた視座も持ち合わせている彼が、引退を前に何を語るのか。私自身も楽しみです。
皆さんも是非、お楽しみに!
